夏目漱石について その43

 前回の記事では夏目漱石の没後に発表された「書簡集」について書きましたが、漱石の書籍に関する逸話も残っています。例えば、漱石の代表作である「こころ」は岩波書店で出版されましたが、これは漱石が印刷費を出した「自費出版」だったのです。岩波書店の創業者である岩波茂雄は東大で漱石の講義を受けており、古書店から「岩波書店」になって初めて出版しようとしたのが夏目漱石の「こころ」です。
 漱石が引き受けてくれた事に喜び、岩波は採算を度外視して、装丁などを豪華にしようとしました。ですが、出版費用も自分が出している漱石は生き過ぎだと小言を言う事もあったそうです。そんな「こころ」の自序では、この本の装丁などを自分でしたという漱石の文章があります。今では専門家に依頼していたが、箱に表紙、見返しに扉から奥付の模様に題字、朱印から検印まで全て自分で考えて、自分で描いたと書かれています。漱石が亡くなってから現在に至るまで、岩波書店で発行される「漱石全集」は、漱石が手掛けた装丁を模倣しているそうです。

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