宮沢賢治「銀河鉄道の夜」について14

 カンパネルラの言葉に少し困惑したジョバンニでしたが、それも途中で見えてきた美しい光景にうやむやにになり、そんな2人を乗せた汽車は「白鳥の停車場」に着くと20分停車することに。特に残る理由もないので、カンパネルラとジョバンニはドアが開くと改札口へ駆け出しますが、そこには誰も居らず、先に降りた人も見当たりませんでした。それでも2人は怖がったりせず、停車場の前に行ったり、汽車から見えたキレイな河原に行ったり、辺りの散策を続けました。河原の小石は全て透き通っていて、水晶やトパーズやコランダムといった鉱物の粒だったのです。それを手に取ったり、銀河の水に手を浸していた2人は、川上にあるススキの生えている崖下で数人の人影が動いているのに気付き、行ってみようと走り出しました。
 そして、近くに行くと「プリオシン海岸」という標札が立っていて、そこでは背の高い学者らしい人が、3人の助手らしい人に夢中で指示を出していたのです。見ると、そこでは不思議な獣の骨が掘り出されている最中でした、カンパネルラとジョバンニに気付いた学者、作中では大学士と書かれた人物が眼鏡を光らせ、自分達が何をしているか、掘り出した物をどうするか聞かせてくれました。そうしていると、時間はあっという間に過ぎ、2人は元の車室の席に座って来た法学を窓から見てみました

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宮沢賢治「銀河鉄道の夜」について13

 不思議な声を聴いたジョバンニとカンパネルラを乗せた小さなきれいな汽車は、ごとごとごとごと、天の川の水や三角点の青白い微かな光の中を走っていきます。窓の外では、線路沿いに短い芝があり、その中に紫のキレイなリンドウの花が咲き乱れていました。そんな中で、急にカンパネルラは母親は自分を許してくれるだろうか、と少しどもり、せき込みながら言うのです。ジョバンニも今になって母親の事を思い出しますが、カンパネルラの言葉を黙って聞いていました、彼は母親が本当に幸せになるなら何でもする、けれど何が母親の一番の幸せか分からない、と泣きそうなのをこらえるように、何かを決心した様に言うのです。
 そんなカンパネルラにジョバンニは思わず、君の母親は何も酷くない、と叫びました。そんな2人を乗せた汽車の中が、急に白く明るくなったのです。それは窓の外に立派な白い十字架が立った島の光でした、車室の中の旅人達が立ち上がるので、2人も思わず立ち上がりました、その時のカンパネルラの頬が、ジョバンニには売れた林檎の様にうつくしくかがやいて見えたのです。それから、汽車はカンパネルラの地図に示された「白鳥の停車場」に十一時きっかりに着き、停車場にある時計の下には「二十分停車」と書かれていました。

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宮沢賢治「銀河鉄道の夜」について12

 いつの間にか銀河を走る不思議な汽車に乗っていたジョバンニと、目の前の座席に、少し顔色が悪そうな様子で座っていたカンパネルラ。けれど、カンパネルラは窓から外を見ていると、元気になった様で水筒やスケッチ帳を忘れてきたけれど、もうすぐ白鳥の停車場につくから構わない、と勢いよく言うのです。そして、銀河ステーションで貰ったという黒曜石で出た立派な地図をまわして見ていました、ジョバンニはどの地図をどこかで見た気がしましたが、地図に書かれている白鳥の停車場や自分が乗っている汽車や窓の外の景色が気になったのです。その汽車は天の川の水の中を走っていて、最初は気付かないのですが、目を凝らすとガラスや水素より透き通っていて、それが美しい光を放ち、幻想的な風景となってジョバンニをどきどきさせました。
 そこで、ジョバンニは汽車が煙を出していないことに気付き、カンパネルラはアルコールか電気で走っているのだろう、と言いました。すると、どこか遠くの方から、この汽車はうごくようにきまっているからうごいている、本当はごとごとと音すらしていないが、そう聞こえる気は2人が音をたてる汽車になれているからだ、と何度も聞いた覚えがある様な声がしたのです。

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宮沢賢治「銀河鉄道の夜」について11

 丘の上で星を眺めていたはずのジョバンニは、その星が姿を変えて、野原に真っ直ぐ立ったかと思えば、どこからか、銀河ステーション、銀河ステーションという不思議な声が聞こえてきたのです。すると、いきなり目の前が明るくなって、気が付くとジョバンニはごとごとと走る列車に乗っていたのです。小さな黄色い電燈の並んだ、青いビロードを張った腰掛けががら空きの車室で、窓から外を見ながら座っていたジョバンニは、すぐ前の席に真っ黒な上着を着た、背の高い子供が、窓から頭を出して外を見ているのに気付きました。その子供の肩の辺りに見覚えがある様な気がして、顔が見たくなり、ジョバンニは自分も窓から顔を出そうとしました。ですが、その前に子供が頭を引っ込めて、こっちを見たのです、それがカンパネルラだったのです。
 ジョバンニは何時からいたのか聞こうとしましたが、その前にカンパネルラが他のみんなは走って来たけれど遅れてしまった、ザネリも随分と走ったけれど追いつかなかった、と言ったのです。そこで、ジョバンニは自分達が一緒に誘って出かけたのだ、と思ったのです。なら、どこかで降りて皆を待っていようか、と言いますが、カンパネルラは少し青ざめた、どこか苦しそうな顔色でザネリは父親が迎えに来たから帰ったよ、と言いました。

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宮沢賢治「銀河鉄道の夜」について10

 ジョバンニは母親の牛乳を待つために少し時間をつぶそうとしたら、運悪く自分をからかう同級生たちに遭遇し、何とかやり過ごしたと思って振り返ったら、その同級生達とカンパネルラが口笛を吹いている姿を見つけてしまいました。寂しい気持ちなったジョバンニは、彼らから離れて、空が開けて、天の川が見える丘の頂上まで来ると、まだつめたい草の上に寝転がりました。そこからは町の灯りも見え、子供達の歌声や口笛、それから少し妙ですがきれぎれの叫び声もかすかに聞こえてきたのです。そうしている内にジョバンニの汗でぬれたシャツも冷やされていったのです、そんな時、野原から汽車の音が聞こえてきたのです。そして、ジョバンニの目に、一列に並んだ列車の窓、その中にいる色々な旅人が飛び込んできたのです。
 それをぼんやり見ていたジョバンニですが、これは昼間の授業で先生が言っていた様子と違う事に気付きます。さらに、自分が居る場所も、違う場所の様に思えたのです。そして、見ていた星まで奇妙に見え、まるで星の集まりが大きな煙の様に思えたのです。やがて、ジョバンニは自分の後ろにあったはずの星空の形が変わり、光り方も変わり、それが終わると今出来たばかりの鋼の板の様な物に変わり、野原に真っ直ぐ立ったのです。

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宮沢賢治「銀河鉄道の夜」について9

 牛乳屋へ行ったジョバンニですが、年を取った女の人が出てきましたが、店の人ではないらしく、今は誰も居ないから明日にしてほしいというのです。けれど、ジョバンニが病気の母が待っているから、と頭を下げて頼むと、少し経ってから来てくれ、と言ってくれました。お礼を言って、少し時間をつぶす為にジョバンニは向こうの橋へ行こうした時、町の雑貨店の前で、烏瓜を手にした数人の同級生達を見かけたのです。さっきの様な嫌な思いをする、と一度は戻ろうとしますが、ジョバンニは敢えてそちらに向かって歩いていきました。川へ行くの、と言いたかっただけなのですが、それがすんなり出ないと思うと、すかさず同級生達はジョバンニをからかう事を言ったのです。
 その中にカンパネルラの姿を見つけ、彼が気の毒そうな、怒らないかと問う様に自分を見ている事に気付きました。その眼を避けるように、ジョバンニは歩みを進めて、皆が通り過ぎると振り返ってみました。そこには、同級生達と同じ様に口笛を吹くカンパネルラが居て、ジョバンニはさびしくなって、黒い丘の方へ走り出したのです。そこは牧場の後ろにあるゆるい丘で、頂上は黒く平らで、てっぺんまで行くと天の川が南から北へ渡っているのが見えるのです。

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宮沢賢治「銀河鉄道の夜」について8

 まだ届いていない母親の牛乳を取りに行き、その帰りに少しだけ祭りを見ていこうと思ったジョバンニですが、途中でクラスメイトに嫌な事を言われてしまいます。それについて色々と考えている間に、きれいに飾られた街を通っていきます。時計屋の明るく、一秒ごとに赤い石で作られたフクロウの眼が動いたり、宝石が海の様な色をした厚いガラス盤に載って、星の様にゆっくりめぐるネオン燈、そんな装飾が施された真ん中に黒い丸形の星座早見が青いアスパラガスの葉で飾ってありました。それが学校で見た図より小さいのに、その日と時間に合わせて盤を回すと、そのとき出ている空が楕円形の中に巡ってあらわれる様になっているなど、非常に凝った作りだったのです。
 なので、ジョバンニは思わず我を忘れて見とれ、その中に広がる星空をどこまでも歩いてみたいと思ったのです。そうして暫くぼうっとしていたいましたが、牛乳の事を思い出して、町を通っていきました。空気は澄み切って、店の中も街燈も祭りの為にキレイに青く飾られて、水の中に居る様な景色の中を、他の子供達は楽し気に祭りの口笛を吹いたり、祭りの掛け声を上げながら走っていました。そんな風景の中で、ジョバンニは首をたれて、周りの賑やかさとは違う事を考えながら牛乳屋へ急ぎました。
  

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宮沢賢治「銀河鉄道の夜」について7

 絶対に父さんは帰ってくるというジョバンニは、クラスメイトが父親の事で何かいう中で、カンパネルラだけは違う、と言いました。母親もジョバンニの父親とカンパネルラの父親が、ちょうど2人の様な子供の頃から友達だったと言い、ジョバンニは自分も前は父さんと一緒にカンパネルラの家に言ったこと、カンパネルラの家にはアルコールランプで走る汽車があること、今も新聞配達で家にいくことを話しました。それから、牛乳を取りにいくついでに今夜のお祭りを見てくると言いました、母親は川に入らない様に注意しながら、カンパネルラと一緒なら、もっと遊んできていいと言ってくれたのです。それを聞き、ジョバンニは食器やパンの袋を片付けると30分だけ長く出てくるといい、家を出ました。
 すでに日が沈んだ暗い町の坂をおりながら、ジョバンニは自分が機関車になったつもりで、街燈の光に照らされた影をコンパスに見立てて、街燈の下を通り過ぎました。その時、クラスメイトのザネリが電燈の向こうにある暗い横道から出てきて、すれ違い様に皮肉を言ったのです。ジョバンニはお祭りに行くのかと、声を掛けようとしただけなのに、嫌な気分になりました。声を高くして叫び返しますが、ザネリは直ぐに行ってしまい、声は届かなったようです。

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宮沢賢治「銀河鉄道の夜」について6

 仕事を終えて、パンと角砂糖を買ったジョバンニは一目散に家に帰りました、彼の家は裏町の小さな家です。三つならんだ入り口のいちばん左側に空き箱があり、紫のケールやアスパラガスが植えてあります。帰るなり、ジョバンニは靴を脱いで、入り口の傍にある部屋で寝て休んでいる母親に声を掛けました。そして、窓を開け、今日の賃金で買った角砂糖の事を話しました。牛乳に入れて、母親に飲ませてあげるつもりだったのです、母親は今日は涼しくて調子がいいし、仕事で疲れているだろうジョバンニを気遣い、角砂糖入りの牛乳は先に飲むように勧めました。それから、ジョバンニより先に帰ってきた彼の姉が、トマトで何か作った事を伝えました。
 それを食べながら、ジョバンニは母親と今日の牛乳が届いていない事や、そろそろ父親が帰ってくるかもしれない、という事を話しました。今、この家で暮らしているのはジョバンニと母親と彼の姉の3人だけ。けれど、今朝の新聞で北方の漁が上手くいったと知り、ジョバンニは漁に出ているお父さんが、そろそろ帰ってくると言ったのです。けれど、母親は漁に出ていないかもしれない、というのです。そんな母にジョバンニはきっと出ている、お父さんは監獄に入る様な悪いことはしていない、お父さんが学校に寄贈した大きなカニの甲羅やトナカイの角なんかは学校の標本室に飾ってあって、6年生は授業にも使っている、と言いました。

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宮沢賢治「銀河鉄道の夜」について5

 クラスメイトや町が夜の銀河祭りに向けて準備を進めるなか、ジョバンニは活版所に向かい、三番目に高いテーブルに座った人におじぎをしました。その人は少し棚を探してから、一枚の紙をジョバンニに渡して、今日のノルマを頼みます。ジョバンニはテーブルの足元から一つの平たい小さい箱を取り出すと、電燈が沢山ついた、たてかけの壁の隅の所へしゃがんで小さいピンセットで小さな活字を拾っていきます。途中で声を掛けられますが、決して良い挨拶ではなかったので、ジョバンニは返事をせず、小さい活字を懸命に拾い続けました。
 そして、六時にはジョバンニが平たい箱いっぱいに入れた活字と、先ほど渡された紙と内容が合っているか確認して、さっきのテーブルの人の所へ持っていきました。その人が黙って頷くので、ジョバンニはおじぎをすると扉を開けて、今度は計算台の所へ行きました。そこには白い服の人が居て、やはり黙って銀貨を1つ渡してくれました、それが今日の日給です。仕事で疲れていましたが、給与をもらえたジョバンニは顔色をよくして、勢いよくおじぎすると鞄を持って活版所を飛び出し、口笛を吹きながらパン屋へ寄ってパンの塊と角砂糖を一袋を買うと、走り出したのです。

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