本日から紹介するのは、前回に引き続き、宮沢賢治氏の童話です。これは前作の「銀河鉄道の夜」とは違い、宮沢賢治が生前に発表した童話で、1932年4月に刊行された雑誌「児童文学」に掲載されたそうです。更に、本作は2012年に長編アニメーション映画にもなっているので、原作を読む前に此方を見ている方も居るかもしれません。そんな本作は主人公「グスコーブドリ」、通称「ブドリ」の生涯を描いた作品となっており、また作者の農業に携わった経験も生かされています。
そんなブドリの人生は、大きな森から始まります、名高い木こりの息子として生まれ、母親は家の前にある小さな畑の世話をしており、またネリと言う名の妹が居ました。ですが、ある年から父親の切った薪が売れなくなり、食べ物に困る様になったのです。やがて、父親は家を出たまま戻らなくなり、次に母親も僅かな食べ物だけ残して居なくなってしまいました。そんなブドリに、更に悲しい出来事が起こります、僅かに残った粉を妹と分け合っていると籠を背負った目の鋭い男が来て、食べ物をくれたと思ったら妹ネリを籠に入れて連れ去ってしまったのです。ブドリは泣きながら男を追いかけましたが、ロクに食べていない子供が大人に追いつける筈もなく、やがて森のはずれで力尽きて倒れてしまったのです。
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