Monthly Archives: 7月 2013

武田泰淳 『風媒花』 十二

一 橋のほとり 十二 そして、峯たちの会話が続きます。 「『軍地さんが桂さんに会う……』……。/『軍地君の潔癖は僕も認めるけれどね』大学講師の西村は、いつも仲間うちで調停役を買って出た。その役は、世なれた四十男の妥協的態 … Continue reading

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武田泰淳 『風媒花』 十一

一 橋のほとり 十一 「どのように親しみ合い、愛し合ったところで、仲間の一人々々の皮膚のほんのわずかの距離にも、塵埃の充満した空気が、ボアッと立ちふさがっているのだ。」 この認識の仕方は徹底的に正しいです。距離こそが、時 … Continue reading

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武田泰淳 『風媒花』 十

一 橋のほとり 十 「『西はその点はジャーナリストだからな。如才ないよ』軍地が皮肉をもらすと、口もとの傷痕(きずあと)は凄みを帯びる。中支戦線で、直属の将校に帯剣で殴られた傷痕は、すべすべした、薄く盛り上がった筋を、軍地 … Continue reading

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武田泰淳 『風媒花』 九

一 橋のほとり 九 「『今日、桂(クエイ)さんが来られること、峯さん、ご存知ですか』」/原は事務的に、かつ礼儀正しくいった。……。女の噂話など一刻も早く打ち切らせるため、原は性急な、意味ありげな言い方をした。」 ここで、 … Continue reading

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武田泰淳 『風媒花』 八

一 橋のほとり 八 「軍地の、髪の毛が薄い大きな頭部がゆっくりと持ち上げられた。……。恋人を迎えるような、懐かしげな眼つきだ。『奴は、最初はやさしいのだ。そのうち攻撃して来る。帰るまでにひどい目に遭わせる』……。」 ここ … Continue reading

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武田泰淳 『風媒花』 七

一 橋のほとり 七 「会を構成する全員の全胎内が腐り果てる事があったなら、その一瞬に、彼は人間に絶望するだろう。会は前進し、彼は取り残される。それはいいのだ。……。峯は嫉妬ぶかい。会の同人の一人々々に対して、嫉妬の眼をキ … Continue reading

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武田泰淳 『風媒花』 六

一 橋のほとり 六 「会は激しい政治情勢の風圧の下で、次第に凝結し、結晶を鮮明にしつつある。同人の精神は強固になり、態度もいつか大人びて来た。……。彼は気取(けど)られぬように離脱した。自分自身にさえ気取られぬように。… … Continue reading

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武田泰淳 『風媒花』 五

一 橋のほとり 五 「ガレージの横から、……、『フミオキトクスグコイオウジキユキユうビヨウインヤスエ』電報が配達されたのは、約一時間前だ。……行くことを遅れさすために、峯は今日の会合に、わざわざ出席しようと、心に決めたの … Continue reading

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武田泰淳 『風媒花』 四

一 橋のほとり 四 「峯自身も誰も来ていない二階の喫茶店の固い椅子に腰を下ろすと、きまって窓から、街路を見下ろす。……新しい仲間どうしが、互いに監視しあい、警戒しあうところまで、まだ事態は進展していない。だが、やがてそう … Continue reading

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武田泰淳 『風媒花』 三

一 橋のほとり 三 「橋の向こうの電車線路を横断すれば、研究会の仲間の集合しているビルが、直ぐ鼻の先だ。……商売熱心な女たちの太い手脚の動き方、線路を挟んだ両側の二組の男女のチグハグな心理状態が、峯にはよく感ぜられた。」 … Continue reading

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