芥川龍之介『侏儒の言葉』 その2

 前回に引き続き、芥川龍之介の「侏儒の言葉」より、本日は空に輝く「星」についての一節です。この章で作者は「太陽の下に新しきことなしとは古人の道破した言葉である。しかし新しいことのないのは独り太陽の下ばかりではない」と書いています。これは現代語にすると「太陽の下に新しい発見はないと、昔の人は言いきったとある。だが新しい発見や驚きがないのは太陽の下ばかりでない」です。ここで本題の星の話が出ます。
 そして、芥川龍之介は宇宙に存在する星も、いつか光を失ってしまう。そして、人の命に限らず、命ある物には必ず死が訪れる。さらに地球の隅っこで起こっている事も、宇宙の果てで起こっている事も大して変りない。星が一つの生命体と考えるなら、暗い夜空に浮かぶ輝きも人の感情の様に思えるし、それを詩人は先に理解して言葉にしたと書いています。

 冒頭で「自分の考えを述べるだけ」と書いてあるのに、随分と哲学的な事を考えると思いました。こうした考え方は当然と言えば当然ですが、見落としがちですからね。

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