室生犀星から見た「作家」としての芥川龍之介

 前回から続いている三名の話ですが、本日は芥川龍之介と室生犀星、正確には小説を本格的に書く前の室生犀星が見た「作家」としての芥川龍之介のエピソードを一つ紹介します。ある日、室生氏が芥川氏の元を訪れると先客がいました。それは雑誌記者で芥川氏に原稿を催促していたのです。ところが芥川氏は書けない物は書けないと言い張り、原稿を出そうとしないもです。記者は最初は三枚か五枚で良いと言い、それに芥川氏は三枚書けるなら十枚は書けるが書けないと言い、それなら記者は二枚で良いと言います。それでは小説にならないという芥川氏に記者は芥川氏の小説は元が短いから二枚でも小説になると言います。これを見て室生氏は驚きます。その頃には室生氏は一日に三枚か四枚の小説を書いていました。
 なのに二枚でも良いから原稿を催促される芥川氏は「作家」として凄いし、原稿を最初に添削する記者を怖がらない姿勢にも驚かされます。結局、その記者は粘りに粘って来月号から連載してもらう様に取りつけます。これは知り合いじゃなくても見れば驚く問答でしょうね。

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