夏目漱石について その10

 前回は夏目漱石の友人の中でも最も親しい菅虎雄という人物を紹介しました。そんな夏目漱石を皆さんが初めて知るのは国語の教科書だと思います。現在の内容は分かりませんが、その中でも教科書に取り上げられる回数が多いだろう作品は「こころ」です。この作品を含めて、その前に発表された「彼岸過迄」と「行人」の三作は「後期三部作」と呼ばれています。これは三作とも人間の「エゴイズム」と「倫理観」の葛藤が題材になっているのです。本作は「私」という語り部が「先生」と出会い、やがて「私」は「先生」の過去を知る事になるのです。そこで「先生」は友人だった「K」と「お嬢さん」との間で起こった事を手紙で打ち明けます。
 この「こころ」は当時から男女共に人気があり、その要因は「先生」と「K」の複雑な人間関係にあるとされています。私も読んだ事がありますが、二人の関係は色々な意味で深く、また先に書いた「エゴイズム」と「倫理観」に苛まれた「先生」は苦しかったろうと思わずにはいられません。

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