夏目漱石について その29

 前回の記事から夏目漱石は偉い肩書きを嫌っている様と書きましたが、これは「博士問題」の前にもあったのです。例えば、漱石が荒れたというロンドン留学の際に妹から手紙で「早く博士になってください」という内容の手紙が来た時は、博士を有難がるようではダメだと返事を書いたそうです。また、とうある雑誌で投票によって「文芸家」として選ばれた際も優劣をつけるのを好まない漱石は「選ばれたのは満足ですが」と金杯を拒否したそうです。
 ですが、弟子と言われる人の中で博士号を取った人がいると御祝いしたそうです。それが鈴木三重吉、野上豊一郎、小宮豊隆です。この三人を漱石は手紙で「三新学士」と書いており、尺八の音響研究で博士号を取った寅彦に手紙を出して三人の御祝いをすると連絡したそうです。この様に漱石は気難しい事で有名ですが、それと同時に彼を慕う者が評価されるのを喜んだそうです。また、漱石の友人で博士と評されるのを渋っている友人に嫌味を言うと実は博士号を貰っていなかったという話も残っています。

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