夏目漱石について その35

 前回の漱石に関する話では、明治に入って普及し始めた「電話」について書きました。そんな漱石ですが、他にも面白い話題があります。それが「万年筆」です、実は漱石は親戚が餞別として持たせてくれた一本の万年筆を使わない内に壊してしまったのです。その理由が面白いのです、これは漱石が書いた「余と万年筆」に綴られています。これは丸善で売られている「万年筆」に始まり、実際に買った「万年筆」の使い勝手などを書いたエッセイですが、その中に「十二年前に洋行するとき親戚のものが餞別として一本くれたが、それはまだ使わないうちに船のなかで器械体操の真似をしてすぐ壊して仕舞しまった」という一文があります。
 これは「余と万年筆」からの抜粋で、本当にしたのでしょう。なぜ器械体操をしたのか書かれていませんが、気難しい漱石が体操の真似をしたというのが何とも可笑しく感じられます。また、購入した「万年筆」に対しても悪態めいた事ばかり挙げていると思えば、その原稿は「万年筆」で書かれており、こちらは使い勝手が良いと褒めています。こうした素直な感想も、気難しい漱石を想像すると笑ってしまう所です。

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