夏目漱石について その37

 先日の自転車の話から漱石がロンドンに渡った際の話を探していると「カーライル博物館」という紀行を見つけました。この博物館はイギリスのトマス・カーライルという思想家が1834年頃から亡くなるまで過ごした居住です。ロンドン滞在中に漱石が散歩して、下宿に帰る際に思い出す、と書いています。そして、カーライル博物館が出来る経緯や本人の人となりを綴っています。そして、名簿に名前を書く際に自分の他に日本人はいない様で、それが嬉しく感じられるとも書いています。それから案内人の話し方や部屋の様子などを書いて、更にカーライルが書斎としていた使っていた場所に辿り着きます。そこは部屋ではなく屋根裏で、そこに至ったカーライルの心情を文章から「音」が彼を屋根裏に追いつめたと綴っています。
 やがて、案内人に促されて階下に降りる際に漱石は「下界に近付く様な心持ちだ」と残しています。おそらくですが、周囲の「音」を嫌って上へ、上へと登った思想家に気難しい漱石も共感したのでしょう。

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