夏目漱石について その44

 前回の記事では漱石と岩波書店から発行された「漱石全集」に関する話をしました。「こころ」が発行されたのは大正三年の九月ですが、その三年前の明治四十五年頃に著名な人物と会っています。その人物の名は横山大観、云わずと知れた日本を代表する日本画家です。大観は漱石の一つ年下で、同時期に活躍していた人物でもあります。一見すると共通点が無い様に思える二人ですが、実は大観は漱石の大ファンだったのです。
 大観は絵を描いている最中に集中するためか面会を断るのが習慣となっていましたが、ある日、書生から「夏目金之助(漱石の本名)が来た」と聞き、慌てて書生に呼び戻させたという話があります。そして、漱石に絵が欲しいと云われた大観は代金は要らないので、漱石の書がほしいといったそうです。漱石が引き受けると、絵は十日と経たず夏目家に届けられたそうです。また、その翌年の大正元年に漱石は「東京朝日新聞」の「文展と芸術」にて大観の絵について文章を掲載しています。これは意外な繋がりと漱石が当時から人気だった事が伺える逸話です。

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