夏目漱石について その48

 本日から三月に入り、季節は春めいてきました。そんな本日も先週に引き続き、「三四郎」より、作中で書かれる食べ物について紹介します。先週の「鮎の煮びたし」は三四郎だけが食べていましたが、今回は別の汽車で一緒になった「髭のある人」が駅で買って分けてくれた「水蜜桃」です。作中では「髭のある人は入れ代って、窓から首を出して、水蜜桃(すいみつとう)を買っている」とあり、その後に三四郎にも食べる様に言います。ここで面白いのが、この人物が「子規」の話をするのです。
 「子規は果物がたいへん好きだった。かついくらでも食える男だった。ある時大きな樽柿たるがきを十六食ったことがある。それでなんともなかった」と書かれており、柿が好きだった子規と交流があった漱石の事を考えるに、これは実際に見たか、聞いた事かもしれません。相手の話を「つまらない」と思っていた三四郎ですが、子規の話には興味を持って話を続けようとします。話題が変わって話は続きませんが、この部分だけでも二人の親しさが感じられます。

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