夏目漱石について その49

 本日も作品は「三四郎」ですが、前回の続きとなります。主人公の三四郎は子規の話に興味を持ちますが、相手の話題は豚に逸れていき、美味しい物を欲しがるのはあぶないと言い、やがてレオナルド・ダ・ヴィンチにまで話が飛びます。
 「じっさいあぶない。レオナルド・ダ・ヴィンチという人は桃の幹に砒石(ひせき)を注射してね、その実へも毒が回るものだろうか、どうだろうかという試験をしたことがある。ところがその桃を食って死んだ人がある。あぶない。気をつけないとあぶない」
 そう言いながら、桃の種や皮を一つにまとめて新聞に包むと、窓の外へ投げます。仰々しい名前を聞いて、三四郎は辟易して、前の駅で会った女性との嫌な事も思い出して不快な気分になります。ですが、相手は気にせず行き先まで聞いてきます、その後も同じタイミングで弁当を食べたり、駅で見かけた西洋人について話したり、けれど名前を聞く事はありませんでした。そんな彼は第一高等学校の英語教師で広田先生と言いますが、それは後で分かる事です。そして、次回から舞台は東京へ移ります。

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