さて、前から続けている「三四郎」ですが、ようやく主人公の三四郎は東京に降り立ちます。電車の音や人の多さ、東京の広さに驚き、塞ぎこんだ三四郎の故郷から手紙が届きます。そこで知り合いの従弟が大学校を卒業して、理科大学に居るから尋ねて、よろしく伝えてほしいと書かれていました。名前は「野々宮宗八(ののみやそうはち)」と言い、彼に会いに行くと不思議なモノを目にします。
「最後に向こうのすみを見ると、三尺ぐらいの花崗石(みかげいし)の台の上に、福神漬の缶かんほどな複雑な器械が乗せてある」
それは「光線の圧力」を試験する器械らしいですが、ここで時代を感じるのが「福神漬の缶」です。今はビニールで売られている「福神漬」ですが、日本でプラスチック用品が一般的になったのは1960年代とされています。その缶詰も当時は重要な輸出品でもあり、値段も高く、庶民が利用できる様に社会へ広まったのは大正12年以降とされています。「三四郎」の連載は明治41年頃なので、作中では貴重品だったのでしょう。
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