夏目漱石について その56

 前回の記事の最後で葡萄酒を飲み干した三四郎ですが、その日は酒の勢いもあってか面白い勉強が出来たそうです。そこから、図書館で借りた本の折り返しに鉛筆で書かれた哲学者ヘーゲルの話を読んでいると、与次郎に肩を叩かれて野々宮さんが呼んでいると言われます。二人が知り合いだった事に驚きながらも野々宮さんを探しますが見つからず、与次郎の元へ戻って一緒に図書館を出ました。与次郎によると、野々宮は自分が身を寄せている広田先生の元弟子でよく来る、と。
 そこから話は進み、三四郎は呼ばれた事が気になって、野々宮に会いに行きました。用件を聞くと、三四郎の母が御世話になっているからと贈り物をしたそうです。なので、三四郎にも御礼を言いたかったのです。その贈り物が「赤い魚の粕漬」だと聞き、それは「ひめいちの粕漬け」だと教えると、野々宮が色々と聞いてきたのです。
 「三四郎はつまらんものを送ったものだと思った。しかし野々宮君はかのひめいちについていろいろな事を質問した。三四郎は特に食う時の心得を説明した。粕ごと焼いて、いざ皿さらへうつすという時に、粕を取らないと味が抜けると言って教えてやった」
 因みに、この「ひめいちの粕漬け」は明治では大分の名産だった様です。

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