夏目漱石について その59

 さて、先週から少し「食べ物」から話題を変えて、三四郎が落ち込んだ事を紹介しています。前の記事で与次郎から「マカロニ」の話を聞く少し前に、三四郎は家に泊まるきっかけとなった野々宮の妹よし子に出会います。この物語は三四郎の出会いを中心に書かれていますが、女性が登場すると恋愛模様になる事が多く、そこが面白い場面でもあります。話を戻して、三四郎は野々宮が戻って来た後に病院に届け物を頼まれます。妹の事を聞いていた三四郎は気になっていたので喜んで向かいます、そして見舞いに行くと偶然にも前に見かけた女性と出会ったのです。登場させる美人を実際に捜し歩く漱石らしく、その見た目は着物から顔立ちまで、詳細に綴られています。
 「こまやかな肉が、ほどよく色づいて、強い日光ひにめげないように見える上を、きわめて薄く粉こが吹いている。てらてら照ひかる顔ではない。肉は頬といわず顎といわずきちりと締まっている。骨の上に余ったものはたんとないくらいである。それでいて、顔全体が柔かい。肉が柔かいのではない骨そのものが柔かいように思われる。奥行きの長い感じを起こさせる顔である」
 これは一部ですが、その人に話しかけられて赤面した三四郎ですが、その人が身に着けていたリボンが野々宮が買ったものと同じだと気付いて足取りが重くなるのです。その時に与次郎に声を掛けられます、気になった人が知り合いの恋人かもしれない、そう思って落ち込んだのでしょう。この後、三四郎は広田先生と正式に顔を合わせるのです、すぐ後の事なので、ついでに次回の記事で紹介します。

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