夏目漱石について その64

 先週から引き続き、三四郎は広田先生と与次郎と一緒にいます、借りる予定もない貸家を見た帰りに与次郎は広田先生が描いていた絵について聞きます。しかし、先生は黙ったまま、そんな先生に三四郎が真面目な顔で「燈台じゃないですか」と聞きます、「燈明台」とは「とうみょうだい」と読んで、中に灯りを入れて周囲を照らす照明器具の一種です。そう言うと、二人は笑いだします。そして、野々宮さんの事を話題にします。
「燈台は奇抜だな。じゃ野々宮宗八さんをかいていらしったんですね」
 どうして彼の名前が出るのかと聞けば、こう返されます。
「野々宮さんは外国じゃ光ってるが、日本じゃまっ暗だから。――だれもまるで知らない。それでわずかばかりの月給をもらって、穴倉へたてこもって、――じつに割に合わない商売だ。野々宮さんの顔を見るたびに気の毒になってたまらない」
 そんな事を言います、そんな与次郎は自分の周囲を少ししか照らさない「丸行燈」という丸い行燈だと言います。すると、与次郎は急に三四郎の方を向きます。そして、生まれた年を聞いてきたのです。

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