夏目漱石について その72

 さて、前回から急に大学に来なくなった与次郎が借りるのに良さそうな物件がないかと三四郎の元を訪ねますが、そこから話は飛んで広田先生の話題になります。三四郎が広田先生の下の名前を聞くと、萇(ちょう)だと指で書いて見せたり、十二、三年は高等学校の
先生をしており、今も独り身だと教えてくれました。三四郎は広田先生の年まで結婚もせ
ず、子供もいない事に驚きますが、与次郎は先生がたいへんな理論家であり、結婚したこともないのに細君はダメなものと理論で決まっているそうだ、と言います。それを与次郎は愚かだと言い、先生は矛盾している、とも付け足します。与次郎の口から「東京が最も汚い」という先生の言を聞いて、ふと三四郎は言います。
「先生は東京がきたないとか、日本人が醜いとか言うが、洋行でもしたことがあるのか」
 その問いに与次郎は否、と言います、ただ海外に行ったことはないが写真で西洋を研究しているそうです。写真で日本を律するんだからたまらない、や自分の所は汚くても平気だ、と与次郎は零します。

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