夏目漱石について その74

 さて、急に学校に来なくなったと思ったら、借家を探していた与次郎は三四郎に広田先生が自分がいないと何もできないと言います。三四郎が笑うと嘘ではないと言い、今度は真面目な顔になります。そして、これから大いに活動して、広田先生を大学教授にしようと思う、と言います。それまでの与次郎を知っている三四郎は大いに驚きます、冗談だとも言わず、驚いた三四郎を宥めることなく、最後には引っ越しの際は手伝いに来てほしいと頼みます。
「まるで約束のできた家がとうからあるごとき口吻である」
 口吻とは「こうふん」と読み、意味は「くちぶり」や「言いぶり」です、つまり最初から引っ越し先が決まっている様な話し方です。しかし、肝心の家を見つけていない与次郎が帰ったのは十時近くである。一人になった三四郎は、ふと肌寒さを感じます。気付くと机の前の窓が開いており、障子を開けると月夜でした。檜に青い光がさしているのを見て、雨戸を閉めます。すぐに寝床に入った三四郎は、いつもなら好きな情景を繰り返し思い出すのですが、ここで母親の手紙を片付け始めます。

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