武田泰淳 『風媒花』 八

一 橋のほとり 八

「軍地の、髪の毛が薄い大きな頭部がゆっくりと持ち上げられた。……。恋人を迎えるような、懐かしげな眼つきだ。『奴は、最初はやさしいのだ。そのうち攻撃して来る。帰るまでにひどい目に遭わせる』……。」

ここで、新しい登場人物の軍地という男の人が登場します。峯にとっては、この軍地という人物は、どうやら天敵のようです。

「『珍しいね』と、軍地が声をかけた。……。」

ここで軍地との会話で、「蜜枝さん」という情勢の名が登場し、その「蜜枝さん」は妊娠しているという事が語られます。

「新聞社の西、大学講師の梅村、高校教師の原、失業中の中井と会社員の黒田など、仲間の大部分は、峯と同棲している蜜枝と顔見知りである。」

ここで、峯と「蜜枝」とが同棲していることが述べられます。すると、蜜枝のお腹の子は、 峯の子なのか、という疑念がすぐに湧き起こる筈です。先に進みます。

「今日も、火曜会に出席すると告げれば、彼女は連れて行ってと、せがんだはずだ。……蜜枝を一人前に取扱ってくれるのは、火曜会の男たちだけであった。……。生真面目な原は、先輩が、そのような、男の積極的な意志を鈍らせる女性と同棲し、あまつさえ、彼女をお供に連れて会の真剣な空気を乱すのが、不満なのだ。」

蜜枝という女性が、原を除いて、この火曜会という、会合なのか勉強会なのかはまだ解かりませんが、それに出席している男性からちやほやされていることが解かります。武田泰淳はそれを「手ごろなペット」と呼んでいます。

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