夏目漱石について その78

 前回まで母親から送られてきた手紙を読んでいた三四郎ですが、それを片付けて横になる頃には今の自分に出来た「三つの世界」について考えます。上京してから、今までに出来た三つの世界、その一つである「第一の世界」は遠くにある故郷です。与次郎曰く、明治十五年以前の香りがするそうです。全てが穏やかで、まるで寝ぼけている様に感じる、三四郎は帰ろうと思えば直ぐに帰れるとも思います。
「もどろうとすれば、すぐにもどれる。ただいざとならない以上はもどる気がしない」
 この後に三四郎は「脱ぎ捨てた過去を封じ込めた」と続け、故郷の母親のことも忘れようとしますが、そうすると勿体無い気になります。だから、こうし手紙が届いた時だけ、少しだけ故郷の事を思い出し、行ったり来たりして過去を楽しむ様にしています。次に「第二の世界」と「第三の世界」の話になりますが、この二つは少し変わった表現で書かれています。その変わった表現の「世界」に関しては、次の記事から紹介していきます。

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