夏目漱石について その82

 前回の記事で、三つの世界を比べて、自分の理想について考えた際に「すこし広田先生にかぶれた」と
思った翌日に三四郎は与次郎に会いました。それまで、つまらない講義を受けて、午後三時までに自分の考えた「第二の世界」の人間になった気でいて、偉人のような態度で交番の前を通っていたのです。与次郎は三四郎の歩き方を見て、大笑いします、交番の巡査まで薄笑いして偉人になった気分は崩れてしまいました。三四郎が「なんだ」といえば、与次郎は言います。
「なんだもないものだ。もう少し普通の人間らしく歩くがいい。まるでロマンチック・アイロニーだ」
 最後の洋語の意味が分からないので、仕方なく、先日の引越し先について聞いてみます。その事で三四郎を訪ねたといい、明日に引っ越すから手伝ってくれと頼みます。引越し先の住所と集合時間を聞いた後、三四郎は急いで下宿に帰り、晩に図書館から取って返って洋語の意味を調べました。すると、ドイツのシュレーゲルが「天才は意味もなく終日をぶらぶらしなくてダメだ」と言った内容の説と知って、やっと安心して下宿に帰って寝ました。

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