夏目漱石について その84

 与次郎に頼まれて、引越し先の家に行った三四郎ですが、上がってみても既に掃除が終わっていないものの、特に捨てる物が見当たらないのです。なので、座敷の縁側に腰掛けて、庭を眺めてることにしました。そこには大きな百日紅、サルスベリがありますが、根は隣から伸びているようで、こちらに幹の半分以上が杉垣から出ているのです。次に大きな桜、これは垣根の中に生えていますが、枝の半分が道路に出て、あと少しすれば電話線に引っかかって電話の邪魔になりそうです。それから菊が一株、ですが冬咲きの寒菊(かんぎく)の様で、三四郎が見る限りでは咲いていません。その他には何もない、そんな庭を見て、三四郎は思います。
「気の毒なような庭である。ただ土だけは平らで、肌理が細かではなはだ美しい。三四郎は土を見ていた。じっさい土を見るようにできた庭である」
 そうして土を見ていると、高等学校で祝日の式が始まるベルを聞き、九時くらいだろうと考えます。そこで、何もしないのは悪いだろうと動きだします。

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