さて、掃除の必要がないだろうと庭を眺めていた三四郎ですが、何もしないのは悪い、と桜の枯葉でも片付けようとしました。が、ホウキがないと考え出します。そして、また腰掛けて二分した頃に庭木戸があき、意外な相手が現れます。それは「池の女」、三四郎が学校で池の近くで目に止め、ずっと気にしていた女性なのです。この家と隣は生垣で仕切ってあり、十坪もない四角い庭に立った彼女を見て、瞬時に悟りました。花は必ず剪って、花瓶の中で眺めるべきだと。
三四郎は縁側を離れ、女性は折戸を離れて「失礼でございますが……」と会釈して、三四郎を見つめます。その姿を見て、二、三日前に美学の教師から見せてもらった絵を思い出します。
「その時美学の教師が、この人のかいた女の肖像はことごとくヴォラプチュアスな表情に富んでいると説明した。ヴォラプチュアス! 池の女のこの時の目つきを形容するにはこれよりほかに言葉がない」
彼女の目つきを形容するには、その際に聞いた言葉しかないと思ったのです。
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