夏目漱石について その86

 さて本日は掃除を始めようとした矢先、庭に現れた女性についてです。作者の漱石は「理想の美人」を作中に登場させる事が多いそうで、この女性についても随分と細かい描写がされています。わざわざ絵画の話まで持ち出し、彼女の目つきを褒めています、また艶やかな何かを訴えるとも評しています。それから、三四郎が見られる方が媚びたくなる等と考えていると女性が広田先生の引越し先はここかと聞いてきます。思わず、ぶっきらぼうに答えてしまった三四郎にも構わず、彼女は広田先生がいるかと丁寧に聞いてきます。もうすぐ来るだろうといえば、彼女は少しためらった様子を見せます。
 「女はしばしためらった。手に大きな籃(バスケット)をさげている。女の着物は例によって、わからない。ただいつものように光らないだけが目につい」
 前に見かけた時の事を思い出しながら着物の柄を眺めていると、桜の葉がバスケットの蓋の上に乗ったと思う内に飛んで行きます。やがて、彼女は「あなたは」と三四郎に問いかけます。

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