夏目漱石「坊っちゃん」について3

 前回は兄とのケンカが原因で親子の縁を切るといわれ、それも仕方ないと思っていた坊ちゃんですが、それを止めたのは彼の家に十年来も働いている清という女性でした。泣きながら父親に謝り、なんとか怒りを鎮めてくれたのです、仕方ないと思っていた彼は逆に必死になった清が気の毒に思いました。元々は由緒ある家柄だったのですが、色々あって奉公するようになり、しかも家族に疎まれている彼を非常に可愛がっていました。家族でも父親は年中、母親も息を引き取る三日前には愛想をつかして、町内でも歓迎されない彼を本当に可愛がったのです。
 自分の性格を理解している彼は人に好かれる方ではないと知っており、疎まれるのを何とも思っていなかったので、彼女が「あなたは真っ直でよいご気性だ」と褒めるのも意味が分からない、それなら彼女以外も少しは良くしてくれる、御世辞は嫌いだといつも答えるのです。母親が病気で居なくなってからは更に可愛がられる様になりましたが、それにも文句の様な文章が少しばかり続きます。

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