夏目漱石「坊っちゃん」について25

 坊ちゃんが宿直室に戻ると日が直ぐに暮れて、二時間程は手伝いの人を宿直室に呼んで話をしましたが、それにも飽きて眠れなくても寝床に入る事にしました。寝巻に着替えて、虫除けの蚊帳を捲り、赤い毛布を跳ね除けて、子供の時の癖で尻餅を突いて仰向けになります。この癖で別の下宿にいた時は苦情を持ち込まれましたが、それは下宿の建築が悪いのだから、下宿の方へ掛け合えと追い返した事がありました。ですが、宿直室は二階ではないので勢いよく倒れた方が寝られるだろうと、愉快に思いつつ毛布の中で足を伸ばします。
 ですが、その足に何かが飛びついたのです、ざらざらした何かに驚いて、毛布の中で足を二、三度振ってみると、それが増えだして脛やら股、更に尻の下で踏み潰した感触もしたのです。起き上がって毛布をばっと放り投げると、蒲団の中からバッタが5、60匹も飛び出したのです。最初は驚いたものの、バッタと分かって坊ちゃんは自分を驚かせたバッタに腹を立てて30分かけてバッタ退治をしたのです。

Posted in 文学 | Leave a comment

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください