夏目漱石「坊っちゃん」について29

 ようやく休めると思った矢先、二階から大勢の足音と声が聞こえ、宿舎の仕返しだと思った坊ちゃんは二階に行きましたが、急に足音も声もしなくなったのです。坊ちゃんは夢を見て寝言をいう癖があり、子供の時にダイヤモンドを拾った夢を見た際は兄を起こしてダイヤモンドをどうしたと問い詰めた時は三日ほど家中の笑い話にされたのです。今回も夢かと思った矢先、廊下のはずれで先ほど聞こえた声がかたまって響き、床板を踏み鳴らしたのです。それ見ろ夢じゃないと思い、坊ちゃんは音がする方へ、静かにしろ、夜中だぞ、と負けない程の声を出しました。
 そして、音のする方へ走り出しますが、その途中で堅い物に足をぶつけ、それでも起き上がって片足で飛んで行きました。ですが、着いたら足音も声も聞こえず、生徒が隠れたと思った坊ちゃんは卑怯な事をしたと腹を立て、隠れている者を引きずり出して謝らせてやると寝室の一つを開けて中を見ようとしますが、押しても押しても開かないのです。

Posted in 文学 | Leave a comment

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください