夏目漱石「坊っちゃん」について36

 そうこうしている内に三人の乗った舟の船頭が、ここが良いだろうと舟を止め、錨を降ろします。そこで赤シャツは鯛を釣るつもりでしたが、場所の関係で無理だと知るも、糸を海へ投げ込みます。鯛を釣るとは豪胆だ、と坊ちゃんが思っていると、野だが赤シャツの腕前ならかかります、それに凪ですから、と赤シャツを持ち上げます。その野だも糸を投げ入れます、この糸は先に重りの様な鉛がぶら下がっており、当然ながら浮いてきません。
 浮きもないのに釣りをする様は温度計もないのに温度もはかるようなもので、自分には到底出来ないと見ていると、君もやりたまえと赤シャツが言い、更に浮きが無いから釣りが出来ないのは素人だとも言います。しかし、当の赤シャツが手繰り寄せた糸には何もついてなく、野だが逃した獲物は大きいに違いない等と赤シャツの機嫌取りをします。そんな野だも浮を使う人を小馬鹿にして、妙な事ばかり喋ります。そんな二人に負けじと糸を海へ投げ込み、いい加減に操ります。

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