夏目漱石「坊っちゃん」について38

 一番最初に魚を釣り上げた坊ちゃんですが、一匹で懲りて、後は赤シャツと野だが釣り終わるのを見るばかりでした。そして、結果は十五、六匹ですが、件の魚は坊ちゃんが最初に釣った「ゴルキ」でした。野だは赤シャツの腕前でゴルギなら、自分がゴルギなのは仕方ない、当たり前ですと答えます。船頭に聞けば、この「ゴルギ」という魚は骨が多く、更に不味いので食べられたものじゃない。ただし、肥料には出来るそうで、あの二人は懸命に肥料を釣っているかと思うと、坊ちゃんは気の毒の至りだと思います。
 それなら、釣りを止めて仰向けになって、大空を眺めた方が洒落ている。小言で何か話し始めた二人をよそに、坊ちゃんは空を見ながら清の事を考えました。金銭に余裕があって、自分を頑なに信じる清をつれて、こんな綺麗な所へ遊びに来たら楽しいだろう。いくら景色がよくても、野だと一緒じゃつまらないだろう、と思います。そして、坊ちゃんはシワの多い御婆さんの清なら何処へ連れ出しても恥ずかしない、と思います。

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