夏目漱石「坊っちゃん」について43

 赤シャツから教師としての経験が浅く、生徒に利用される、君の前任者がやられた、そんな事を言われて黙っている坊ちゃんではありません。自分の前任者は誰に乗ぜられたのかと問いますが、赤シャツは人の名誉に関係するから、証拠もない事だから迂闊に話せば自分の落ち度になるから、兎に角、気を付ける様にと言うだけでした。そんな曖昧な物言いでは注意できるものも出来ない、悪い事をしなければ好いんでしょう、という坊ちゃんに赤シャツがホホホホと笑います。笑われる様な事を言った覚えはないし、自分のやり方は間違っていないと信じています。
 そこで考えてみると、世間の大半は悪くない事を奨励している様な、悪くなければ社会で成功しないと信じている様だと思います。子供の頃からイタズラをしていた坊ちゃんとしては、正直な純粋な人を見ると難癖をつけ、軽んじる所もあり、いっそ学校で嘘をついたり、人を信じなかったり、人を乗せる方法を教える方が世の中や当人の為になるだろうと思うのです。

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