夏目漱石「坊っちゃん」について44

 赤シャツに前の担任の事を聞けども答えてもらえず、ただ笑って誤魔化され、やんちゃな子供時代を送った坊ちゃんとしては学校で正しさばかりを説くより、いっそ悪い術を教えた方が世の中にも本人の為にもなるのでは、と思いました。そして、赤シャツが笑っているのは、坊ちゃんの単純さ、そして真率、真面目で飾り気の無い事を笑っている事に逆に感心します。いつも坊ちゃんを坊ちゃん以上に評価していた清なら、そんな事で笑わない、清の方が赤シャツよりよっぽど出来た人だと思います。そう思われているとは知らず、赤シャツは悪い事はしなければいい、けれど人の悪い部分も分からなくては酷い目に遭う。人は見かけによらない、という事を言いながら、野だと浜の景色について語り合っていました。
 そんな坊ちゃん達を乗せた舟は、港屋の二階に明かりが一つついて、汽笛の音が鳴ると、磯の浜へざぐりと乗り上げ、動かなくなりました。かみさんが浜に立っている赤シャツに挨拶するのを横目に、坊ちゃんはやっと掛声と出して磯へ飛び降りたのです。

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