夏目漱石「坊っちゃん」について49

 勝手に生徒を扇動して自分に嫌がらせをしたのは山嵐だと思い、奢ってもらった氷水の代金を返そうと早めに学校に来た坊ちゃんですが、待ち人の山嵐は来る気配がありません。待っている間、坊ちゃんが手汗で濡れた金を息で乾かしていると、赤シャツが来て釣りに誘ったのに大した成果がなかった事を謝ります。別に腹が減った程度で迷惑ではない、と返しました。すると赤シャツは釣りの帰りがけに船の中で話した事は秘密にしてくれたまえ、まだ誰にも話したりしていないね、と女の様な声を出すだけでなく、心配性な男だと坊ちゃんは見たのです。
 話さない事は確かですが、その話がきっかけで、山嵐に氷代を返そうとした坊ちゃんは代金を返す理由を話すつもりでした。その理由を赤シャツに口止めされては困る、赤シャツも赤シャツで、山嵐を連想させる様な話をしておいて、その謎を解かれては迷惑だ、等と教頭とは思えぬ無責任さだ。本来なら、自分と山嵐がケンカを始めた際に、真ん中へ出て来て堂々と自分の肩を持つべきだ、と坊ちゃんは赤シャツが教頭らしからぬ事をするのに腹を立てます。

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