夏目漱石「坊っちゃん」について60

 誰も自分を意見を述べようとしない会議で、坊ちゃんが我慢できずに席を立とうとした時、不意に赤シャツが喋りだしました。彼の持っているハンカチが絹だったのを見て、マドンナから上手くいって自分のモノにしたと山嵐の時と同じく勝手に決めつけた坊ちゃんは席に座り直して言葉に耳を傾けました。言い回しは難しいものの、要約すれば「寄宿生の乱暴は聞いているし、それに関しては教頭として不行届であり、生徒だけが悪い様に見えるが、学校にも責任があるかもしれない。また、血気盛んな者達が善悪の事も考えずに行ったとも限らないが、その処分は校長に決定権がある。自分としては寛大な処遇を願いたい」という内容です。これを聞いて、坊ちゃんは如何にも教育者らしい事を口にする狸も狸なら、赤シャツも赤シャツだと思います。
 つまり、坊ちゃんは赤シャツの言い分を「生徒が悪い事をするのは生徒が悪いのではなく、教師が悪い」と解釈したのです。誰かが殴られても、殴った方ではなく、殴られた方が悪い、寝床にバッタを入れられた坊ちゃんとしては納得できる訳ありません。

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