夏目漱石「坊っちゃん」について62

 校長の「狸」と教頭の「赤シャツ」の言い分に、いきなり席を立った野だが長々と真面目な言葉を並べつつ、要は「同意見だ」と延べ、坊ちゃんは思わず反論しますが、笑われてしまいます。それでも、自分の意見を述べて席に着くと、右隣の博物の教師も坊ちゃんの言い分は分かるが、重すぎる処分は生反動が起こるいけないから、自分も二人の意見に賛成だというのです。左隣の漢字の教師も穏便説に賛成と言い、歴史の教師も教頭と同じ意見だと言いました。これに坊ちゃんは腹を立て、殆どの教師は赤シャツ党、つまり赤シャツの味方だと思いました。
 そんな人々が集まって学校を立てていれば世話はない、坊ちゃんは生徒に謝罪させるか、自分が辞めるか、どちらか一つに決めていたので、ここで赤シャツの言い分が通ったら、直ぐに下宿先に帰って荷造りする覚悟でした。周りの連中を屈服させられる程に口が立つ訳ではないし、させた所で何時までもご交際を願うのは、こっちで御免だ。つまり、説き伏せられても、付き合うのは嫌だ、という事です。この時の坊ちゃんは学校を辞められるなら、どうなっても構わない、また何か言えば笑われるのだから、誰が言うものかと澄ましていました。

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