織田作之助「夫婦善哉(めおとぜんざい)」について2

 夫婦善哉の主人公の一人、蝶子の父は天ぷらの評判に合わせるように材料を使うので、借金が膨れ上がっていくのです。父は色々な仕事を掛け持ち、父がいない時は母が天ぷらを揚げる、そんな貧しい暮らしと二人の姿を見ていた蝶子は小学校を卒業すると、慌てて働きに出ます。そして、紆余曲折を経て、芸者の道を進むことになります。蝶子が芸者の道に進んだ事で借金の問題はなくなりましたが、17歳の時に本気で芸者になると言われ、父親は狼狽えました。衣装に祝儀、他諸々の代金は面倒を見てくれた相手が出してくれると言いますが、それは金銭の前借であり、彼女を縛る事になる、と思ったのです。
 しかし、件の蝶子は持ち前の明るい性格もあり、その頃には本当に芸者になると駄々をこねたのです。子供の頃から苦労させた事もあり、根負けした父は芸者になる事を許し、やがて彼女は元気さを売りに明るい座敷には欠かせぬ存在になったのです。ですが、馴染み客の一人には、胸の内を語っていました。それが、もう一人の主人公、維康柳吉でした。

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