織田作之助「夫婦善哉(めおとぜんざい)」について3

 17歳で人気芸者になりながら、胸に秘めた思いを抱えた蝶子は、妻も子供もいる常連客の維康柳吉には全てを話していました。この時、柳吉は理髪店向きの石鹸やクリーム等の雑貨を扱う卸問屋をしていました。出会って3ヶ月、働く柳吉の姿を見て、蝶子は彼をしっかりした頼もしい男だと思い、それを周りにも言うので蝶子が柳吉に特別な感情を抱いている事は直ぐに知れ渡りました。柳吉に連れられて大阪の美味しい物、例えば高津の湯豆腐屋、夜店のドテ焼き、道頓堀相合橋東詰「出雲屋」のまむし、日本橋「たこ梅」など、当時の大阪に実際にある店を渡り歩くのが蝶子の楽しみになっていました。
 ですが、2人が会うためには金が必要で、仲が深まるのに比例して出費が増えるのです。やがて、柳吉が自由に出来る金も減り、ひょんな事から父親に蝶子との関係が知られて親子の縁を切ると言われ、妻は実家に帰ると決めました。柳吉は事の発端になった蝶子に胸中で文句を言いますが、それでも嫌いになれず、東京の集金を建前に、駆け落ちしようと言ったのです。

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