織田作之助「夫婦善哉(めおとぜんざい)」について8

 母の最期に立ち会えませんでしたが、それでも送り出す事は出来ました、また母は保険に入っており、蝶子に幾らかの金銭も残してくれました。それを柳吉が入院している病院に父が見舞金という形で渡してくれ、蝶子は親の有難さを改めて思い知りました。ですが、退院した柳吉は養生先の湯崎温泉で散財しているのを知り、しかも蝶子の渡した金だけでなく、妹にまで借りていた事を芸者に教えられ、目の前が真っ暗になったのです。今まで自分が柳吉を一人前にしなければと頑張っていただけに、蝶子の失望と怒りは計り知れません。おまけに、柳吉は自分の娘まで温泉に呼んで、あちこち見学していたのです。
 それまで自分の前では娘には無関心を装っていたのに、自分に隠れて会っていたことに遂に蝶子の怒りが頂点に達したのです。ですが、それでも別れることはなく、2人は一緒に暮らす事になります。そして、蝶子の知り合いが貸してくれた金銭で、今度はカフェを開く事にします。名前は変わらず「蝶柳」ですが、今度はネオンも付けた洒落た店でした。

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