夏目漱石「夢十夜」について1

 本日から紹介する「夢十夜」とは、夏目漱石が1908年7月から8月まで「朝日新聞」で連載していた一話完結型、全十話で構成された短編小説で、連載当時の明治を始め、神代、鎌倉、100年後と、リアリティある作風の漱石にしてはは珍しい幻想的な雰囲気の不思議な「夢」と綴った作品です。「吾輩は猫である」の最初の一文が有名な様に、この作品も「こんな夢を見た」という冒頭の一文が有名です。
 そんな記念すべき「第一夜」は、ある男と女の物語。男は腕組みをして、息を引き取ろうとする女の枕元に座っています、男は女を愛しており、女も男を愛していました。ただ、時間だけが2人を引き離そうとします、そこで女は男にこんな事を言いました。
 「自分が死んだら埋めてほしい、大きな真珠貝で穴を掘って、その墓の傍で百年待っていて下さい」と、男は女の言葉を信じて、庭に穴を掘って、墓を作って待ちました。苔の上に座り、百年も待つのかと思い、やがて騙されたのではと思い始めます。そんな男の傍で一輪の百合が咲きました、その百合を見て、男は女が約束を守ってくれたと確信して、そこで始めて気づいたのです、「百年はもう来ていたんだな」と。

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