夏目漱石「夢十夜」について5

 夏目漱石の「夢十夜」、今日で折り返しの5話目です、冒頭は久々に「こんな夢を見た」で始まります。舞台は昔、神代、つまり神話に近いと言われる程の時代です。主人公の「自分」は戦に敗れ、敵軍の大将の前に連れて行かれます。戦に負けて、捕まった自分に敵軍の大将は習わしとして死ぬか生きるかを聞いてきます。生きる事は降参して屈服する事なので、自分の答えは死だ返します。ならばと大将は剣を抜きますが、そこで待ったを掛けます、自分は最後に恋する女に会いたいと言います。大将は夜が明けて鶏が鳴くまで、と猶予をくれました、そして女は自分に会うために馬を走らせていたのです。暗闇の中、ただ敵軍の篝火だけを頼りに、女は馬の前足の蹄を堅い岩の上にしっかり刻みながら、自分に会おうとしていました。その女の耳に、鶏の声が聞こえ、それに気を取られた女は手綱を緩めてしまい、馬は女を乗せたまま深い淵に落ちてしまったのです。女が聞いた鶏の声を出したのは天探女と書いて「あまのじゃく」であり、最後は岩に蹄の痕が刻まれている間は、それが自分の敵である、という一文で終わっています。

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