夏目漱石「夢十夜」について8

 本日を含め、残り3話となった夏目漱石の短編「夢十夜」、今夜は床屋に行った話。夢の中で自分は床屋の敷居を跨ぎます、そこには三、四人の白い着物を着た人物が居て、店の真ん中に立つと部屋が四角く、窓があり、鏡が六つある事に気付きます。心地の良い椅子に座り、鏡の自分と対峙します、そして顔の後ろには窓があり、そこから往来を歩く人の腰から上が見えます。女を連れている人、ラッパを豆腐屋、化粧をしていない芸者を見ていると、白い着物の男がハサミと櫛を持って自分の後ろに立ちます。自分は濃い髭があったので仕上げで良くなるだろう、や、なら頭は物になるだろう、と聞いても男は何も言わずにハサミを鳴らし始めます。
 ただ、一言だけ表の金魚売りを見たか、と聞いてきました。見てないと言っても、男はハサミを動かしつづけ、自分は鏡に映ったり、耳から入る音で様々な人物を感じます。最後は大量の札を数える女を見て、呆然としている間に洗髪する段になっていました。代金を払った自分が外に出ると、男が言ったように金魚が売られており、往来の騒がしさを気にせず、立って金魚売を眺めていました。しかし、自分が見ている間、金魚売は全く動かなかったのです。

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