夏目漱石「夢十夜」について9

 次回で最後となる夏目漱石の短編「夢十夜」、本日は第九夜です、今回は舞台は「裸馬(はだかうま)」や「足軽(あしがる)」という単語が出て来るので、戦国時代頃でしょう。そんな時代の家に三つの子供と若い母がいました、父親は月の出ていない夜中に草鞋に黒い頭巾をかぶり、出て行ったきり戻ってきていない。いつしか、母は三つになる子供に父の所在を聞き、子供は「あっち」と答え、いつ帰ってくるかと聞かれても「あっち」と答えます。そして、母親が「今に帰ってくる」の「今に」だけを覚える位に同じやり取りが続きました。それから、夜になると母は必ず夫の無事を祈りに、「八幡宮」と云う額の掛かっている拝殿に百度参りに出かけます。
 母の夫は侍だから、弓矢の神の八幡へ願掛けをすれば聞いてもらえると思っていたのです、子供は参拝の鈴の音で目を覚まし、泣きだす事もありました。そんな子供を気遣いながら、只管に無事を願った夫は、とっくの昔に殺されていたと夢の中で母から聞いた所で今回の話は終わります。

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