宮沢賢治「セロ弾きのゴーシュ」について3

 夜中までセロを練習していたゴーシュの元を訪れたのは、何度か見たことがある三毛猫でした。その三毛猫はゴーシュの畑から、わざわざ重そうに持ってきたトマトをゴーシュの前におろすと、まるでゴーシュが持ってこさせたようなことを言いました。それを聞き、ゴーシュは昼間の事もあり、三毛猫を一気に怒鳴りつけました。自分はトマトなんて頼んでない、自分の畑のトマトだし、畑にいたずらもしたのはお前だろう、と三毛猫を追い返そうとします。ですが、三毛猫はゴーシュを先生と呼び、「シューマンのトロイ」を弾くことを勧めます。
 生意気な物言いでしたが、三毛猫は先生の演奏を聞かないと眠れないといい、一度は真っ赤になって怒鳴ったゴーシュですが、急に気を変えて「弾くよ」と言いました。そして、扉にカギをかけて、窓も締め切って、セロを取り出して明かりを消し、隙間から月の光が入る位の中で三毛猫のリクエストを聞き返します。「トロイメライ、ロマンチックシューマン作曲」と聞き、こんな曲かというとハンカチを引き裂いて自分の耳に詰めると別の曲を弾き始めたのです。

Posted in 文学 | Leave a comment

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください