宮沢賢治「セロ弾きのゴーシュ」について9

 自分の言葉が予想以上にカッコウを驚かせ、何度も窓に向かわせたことに慌てたゴーシュは思わず足を上げて窓を蹴りました。窓はガラスが何枚かすごい音と共に砕け、窓枠ごと外へ落ちました、その窓の後をカッコウが矢の様に外へ飛び出しました。カッコウは、そのまま真っ直ぐに飛んでいき、とうとう見えなくなってしまいました。その様子を暫く呆然と見ていたゴーシュですが、そのまま倒れるように部屋の隅に転がって眠ってしまいました。次の晩もゴーシュは夜中すぎまでセロを弾いて、疲れたので水を飲んでいました、すると扉を叩くものが来ました。
 猫にカッコウと連日の訪問に、今度は此方から脅かして追い払ってやろうと思い、ゴーシュは待ち換えました。すると、扉を開けて入ってきたのは一匹の狸の子供でした、彼は扉を少し広く開くと、足で大きなを音を出すと、狸汁を知っているかと怒鳴りました。ゴーシュとしては、帰らないと食べてしまうぞ、という意味で言ったのですが、狸の子は床へ座って首をかしげて考えますが、素直に「知らない」と答えました。

Posted in 文学 | Leave a comment

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください