宮沢賢治「セロ弾きのゴーシュ」について12

 もう何度目かになる動物の訪問にも慣れたゴーシュですが、やってきた野ネズミの母親に自分が毎晩、動物たちを治していると聞かされて驚きます。他の動物は治したのに、自分の子供を治さないのはおかしい、と言われますが、ゴーシュは何かの間違いだと言います。なぜなら、今日までゴーシュは只管にセロを弾いていただけなのです、すると野ネズミの母親は泣きながら音が鳴っている間に病気になれば直ぐに治ったのにと泣き出したのです。それを聞き、ゴーシュは自分のセロで病気のが治るのかと、思わず叫びました。聞けば、この辺りの動物は病気になるとゴーシュのいる小屋の床下に入って、血の巡りをよくして治すというのです。
 それでゴーシュは動物とってセロの大きな音がマッサージの役割を果たしていると分かり、すぐ準備をして、音がよく聞こえるようにねずみのこどもをセロの孔へ入れてしまいます。それから、こどもが中で怪我をしていないか確認すると、ラプソディをごうごうがあがあ弾きました。少しして母親がいいというので演奏を止め、こどもを出してやると、しばらく眼をつぶって震えていましたが、起き上がって走りだしたのです。

Posted in 文学 | Leave a comment

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください