宮沢賢治「注文の多い料理店」について5

 山奥で見つけた西洋料理店で何か食べようと入った2人の紳士ですが、その店は廊下が続き、ようやく辿り着いた扉には「当軒は注文の多い料理店ですからどうかそこはご承知ください」、裏には「注文はずいぶん多いでしょうがどうか一々こらえて下さい。」と、書かれていたのです。これを1人は顔を顰めますが、片方は楽観的に料理が来るのが遅い、という意味だろうといいます。顔を顰めた方は、なるほど、と納得して、どこか部屋に入りたいといいました。ですが、2人の前に出てきたのは新しい扉で、その脇には鏡がかかっていて、丁寧に長い柄のついたブラシも置いてあったのです。扉には赤い文字で、
「お客さまがた、ここで髪をきちんとして、それからはきものの泥を落してください。」
 と、書かれていました。料理店なら清潔にしないといけないのは当然と思い、今度は疑うことなく、2人とも素直に髪を整えて、靴の泥を落としました。ですが、ブラシを置くと、そのブラシは霞んで無くなり、室内に風がどうっと入ってきたのです。びっくりした2人は互いに身を寄せ合って、扉を開けて、次の部屋に入りました。

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