宮沢賢治「注文の多い料理店」について9

 2人の紳士が山中で迷い込んだ「西洋料理店 山猫軒」は客に料理を出す店ではなく、店に入った客を西洋料理にする店でした。最後の扉に書かれた文字と塩壺を見て、それに気付いた2人は顔を見合わせ、がたがたと震えだしました、そして入ってきた扉から逃げようとしますが、全く動かないのです。代わりに、奥には扉があり、二つの大きなかぎ穴があり、銀色のフォークとナイフの形が切り出してあり、そこには「いや、わざわざご苦労です。大へん結構にできました。さあさあおなかにおはいりください。」と書かれていました。しかも、かぎ穴から二つの青い眼玉が覗いていたのです。2人は「うわぁ。」とがたがた震え、泣きだしました、戸の向こうでは塩を使わない様子を見て、気付かれたと知るや今度は声を掛けてきました。
 皿は洗ってある、菜っ葉もあるし、あとは2人が来て皿に乗るだけ等と物騒な事を言われ、あまりの怖さに2人は顔をくしゃくしゃにして声もなく泣きました。逃げる事も出来ず、ただ食べられるしかない、そう思ったら「わん、わん、ぐゎあ。」という声がして、亡くなったはずの白熊の様な犬二匹に扉を破って室内に飛び込んできたのです。それを見てかぎ穴の眼玉が消えたと思えば、二匹は奥の扉から中に飛び込み、暗闇の中で「にゃあお、くゎあ、ごろごろ。」という声がしました。すると、部屋は煙の様に消えて、2人の紳士は草の中に立っていたのです。周りを見れば脱いだ衣服に金庫にしまった財布やネクタイピンがあり、犬が戻ってくると案内役の猟師が呼ぶ声がしたのです。助かったと元気になった2人は猟師から団子をもらい、途中で山鳥を買って東京に帰りました、ただ、しわくちゃになった顔だけは元に戻らなかったそうです。これで「注文の多い料理店」は最後となります、次回からは同じく宮沢賢治の代表作「銀河鉄道の夜」を紹介します。

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