宮沢賢治「銀河鉄道の夜」について5

 クラスメイトや町が夜の銀河祭りに向けて準備を進めるなか、ジョバンニは活版所に向かい、三番目に高いテーブルに座った人におじぎをしました。その人は少し棚を探してから、一枚の紙をジョバンニに渡して、今日のノルマを頼みます。ジョバンニはテーブルの足元から一つの平たい小さい箱を取り出すと、電燈が沢山ついた、たてかけの壁の隅の所へしゃがんで小さいピンセットで小さな活字を拾っていきます。途中で声を掛けられますが、決して良い挨拶ではなかったので、ジョバンニは返事をせず、小さい活字を懸命に拾い続けました。
 そして、六時にはジョバンニが平たい箱いっぱいに入れた活字と、先ほど渡された紙と内容が合っているか確認して、さっきのテーブルの人の所へ持っていきました。その人が黙って頷くので、ジョバンニはおじぎをすると扉を開けて、今度は計算台の所へ行きました。そこには白い服の人が居て、やはり黙って銀貨を1つ渡してくれました、それが今日の日給です。仕事で疲れていましたが、給与をもらえたジョバンニは顔色をよくして、勢いよくおじぎすると鞄を持って活版所を飛び出し、口笛を吹きながらパン屋へ寄ってパンの塊と角砂糖を一袋を買うと、走り出したのです。

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