仕事を終えて、パンと角砂糖を買ったジョバンニは一目散に家に帰りました、彼の家は裏町の小さな家です。三つならんだ入り口のいちばん左側に空き箱があり、紫のケールやアスパラガスが植えてあります。帰るなり、ジョバンニは靴を脱いで、入り口の傍にある部屋で寝て休んでいる母親に声を掛けました。そして、窓を開け、今日の賃金で買った角砂糖の事を話しました。牛乳に入れて、母親に飲ませてあげるつもりだったのです、母親は今日は涼しくて調子がいいし、仕事で疲れているだろうジョバンニを気遣い、角砂糖入りの牛乳は先に飲むように勧めました。それから、ジョバンニより先に帰ってきた彼の姉が、トマトで何か作った事を伝えました。
それを食べながら、ジョバンニは母親と今日の牛乳が届いていない事や、そろそろ父親が帰ってくるかもしれない、という事を話しました。今、この家で暮らしているのはジョバンニと母親と彼の姉の3人だけ。けれど、今朝の新聞で北方の漁が上手くいったと知り、ジョバンニは漁に出ているお父さんが、そろそろ帰ってくると言ったのです。けれど、母親は漁に出ていないかもしれない、というのです。そんな母にジョバンニはきっと出ている、お父さんは監獄に入る様な悪いことはしていない、お父さんが学校に寄贈した大きなカニの甲羅やトナカイの角なんかは学校の標本室に飾ってあって、6年生は授業にも使っている、と言いました。
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