宮沢賢治「銀河鉄道の夜」について8

 まだ届いていない母親の牛乳を取りに行き、その帰りに少しだけ祭りを見ていこうと思ったジョバンニですが、途中でクラスメイトに嫌な事を言われてしまいます。それについて色々と考えている間に、きれいに飾られた街を通っていきます。時計屋の明るく、一秒ごとに赤い石で作られたフクロウの眼が動いたり、宝石が海の様な色をした厚いガラス盤に載って、星の様にゆっくりめぐるネオン燈、そんな装飾が施された真ん中に黒い丸形の星座早見が青いアスパラガスの葉で飾ってありました。それが学校で見た図より小さいのに、その日と時間に合わせて盤を回すと、そのとき出ている空が楕円形の中に巡ってあらわれる様になっているなど、非常に凝った作りだったのです。
 なので、ジョバンニは思わず我を忘れて見とれ、その中に広がる星空をどこまでも歩いてみたいと思ったのです。そうして暫くぼうっとしていたいましたが、牛乳の事を思い出して、町を通っていきました。空気は澄み切って、店の中も街燈も祭りの為にキレイに青く飾られて、水の中に居る様な景色の中を、他の子供達は楽し気に祭りの口笛を吹いたり、祭りの掛け声を上げながら走っていました。そんな風景の中で、ジョバンニは首をたれて、周りの賑やかさとは違う事を考えながら牛乳屋へ急ぎました。
  

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